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[Review]入門 考える技術・書く技術 -日本人のロジカルシンキング実践法

入門 考える技術・書く技術 --日本人のロジカルシンキング実践法

入門 考える技術・書く技術 -日本人のロジカルシンキング実践法

姉本・弟本

世界的に有名な文章術の本に、
バーバラ・ミント氏が執筆した『考える技術・書く技術 –問題解決力を伸ばすピラミッド原則–』がある。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

外資系コンサルでライティングのコースを教えている彼女が、惜しげもなくその執筆論を語ってくれている本だ。「ピラミッド構造の文章術」が日本に広まるにあたって、大きな影響力があったそう。

しかし、私が思うところでは、この本には致命的な弱点がある。
ピラミッド構造作成の中核をなす「複雑化」というプロセスがうまく説明されておらず、実践では使いにくいことだ。

その欠点を補い、さらに前進させているのが、
ここで紹介する
入門 考える技術・書く技術 –日本人のロジカルシンキング実践法–(著:山﨑康司)』である。


以降では、バーバラ氏の本を「姉本」、山﨑氏の本を「弟本」とする。

複雑化とは?

バーバラ氏の姉本では、
SCQ分析を通じてピラミッド構造を作っていく。

Situation (状況)
Complication (複雑化)
Question (疑問)

この真ん中にある「複雑化」が、とりわけ難しい。
書きたい内容を分析し、文章に合わせて整形しなおすプロセスのほとんどを、この「複雑化」の中に入れてしまっている。そして、整然とは解説されていない。

この「複雑化」とは、ロジカル・シンキング(論理的思考)だったり、クリティカル・シンキング(批判的思考)だったりする。
そういったやり方が既に自分に染みこんでいる人なら、すぐに実践ができる。しかし、そうしたやり方をまだ習得していない人は、この本を読んでも実践できない、という結果になってしまう。

とくに日本人は、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングを、義務教育でしっかりとは習わない。
というより、それが「好まれない」傾向すらある。
情緒的なものが優先され、ガチガチのロジックで書いたり、相手の意見を批判的な目で見ることは、積極的には推奨されにくい土壌がある。

そのため、ピラミッド構造を作るにあたっては、
批判的に考えなければならない「複雑化」というプロセスで、執筆が止まってしまいやすい。

弟本は、「複雑化」をわかりやすく解きほぐしている

山﨑氏の弟本では、SCQをOPQAとして、再編成している

Objective (望ましい状況)
Problem (望ましい状況と現状のギャップ)
Question (読み手の疑問)
Answer (答え/文章の主メッセージ)

「複雑化」を分解し、OとPとQへと巧みに分散混入させている。
私たちは、この4つのプロセスに思考を浸すことで、ピラミッド構造を簡単に構築しやすくなるのである。

弟本は、演繹型・帰納型の違いを、小学生にも分かるレベルで解説している

ピラミッド型の文章構造を作るとき、おそらくもっともややこしいのが、演繹と帰納の違いであろう。
この違いは、「複雑化」を難しくしている要因の一つでもある。

ピラミッド構造を形成するためには、
「Aだから、Zである」という演繹型なのか、
「FとGとHがあるから、Zである」という帰納型なのか、しっかりと見分けておく必要があるのだ。

演繹型:因果関係や相関関係
(地球は太陽に対して左[西]向きに自転しているから、太陽は東から昇る)

帰納型:例示や例証
(5年前も50年前も、太陽は東から昇ったから、明日も太陽は東から昇る)

ものすごく簡単に言えば、
演繹型とは、「原因を見せて、読み手に納得してもらう」やり方。
帰納型とは、「関連事項を見せて、読み手に推測・納得してもらう」やり方。

この2つは区別が難しく、また区別できない場合も多い。
しかし、ピラミッド構造ではしっかりと書き分けなければならない。
どのような材料を集めればいいのか、アプローチの仕方が変わってくるからだ。

※先ほどの例で言うなら・・
演繹型では、天文学的な理論を調べ、自転と公転の知識を集めて、ピラミッドの土台とする。
帰納型では、数十年前、数百年前の古文書などを集めて、東から太陽が昇っていた記述を使い、ピラミッドの土台とする。

弟本では、これら演繹型・帰納型の違いに関しても、分かりやすく解説してくれている。

弟本では、読み手にも注目している

また、弟本がさらに付け加えているのが、「読み手」の存在である。
姉本のほうは、主に論理面に注目しているので、読み手の存在は希薄であった。
論理的にピラミッドが構築されていればいい、という限定的な内容である。
(あえて絞っているのだろう)

しかし弟本では、読み手の視点を取り入れている。
というのも、どれほど素晴らしいピラミッド構造ができあがったとしても、読み手にとって「分かりにくい」と、意味がないからだ。
ピラミッド構造の頂点がきっちりと読み手に向かって尖っているかどうか、これも欠かせないのである。
この点でも弟本は、実践向きの解説書だ。

まとめ

弟本を読んでから姉本を読めば、
「ああ、そういうことか」と膝を打って理解できる箇所が増えるはずである。
逆に、姉本で挫折した人が弟本を読むと、「先に読みたかった」と恨み言を言いたくなるかもしれない。

結局、姉本も弟本も、どちらもオススメである。
ただし、もっともオススメなのが、弟本を先に読むことである。

書籍目次
序章 誤解だらけのライティング
日本人がロジカル表現を苦手とする本当の理由

誰も教えてくれなかったレポート・ライティング
●誤解1 書きたいことを書きなさい
●誤解2 起承転結で書きなさい
グローバル・スタンダードを学ぶ
●レポートを受ける立場になって読んでみる
●考えるプロセスと書くプロセスを分ける

1章 読み手の関心・疑問に向かって書く
OPQ分析で読み手の疑問を明らかにする
読み手は何に関心を持ち、どんな疑問を抱くのか
読み手の関心を呼び起こすには
読み手の疑問を明らかにする「OPQ分析」
OPQ分析のコツ

2章 考えを形にする
メッセージを絞り、グループ化する「ピラミッドの基本」
メッセージの構造を明らかにする
●一度に覚えられる数には限界がある
●メッセージ構造をそのまま文書へ
グループ化と要約メッセージ
●メッセージが一般論にならないようにする
要約メッセージを文章にするときの「4つの鉄則」
●鉄則(1)名詞表現、体言止めは使用禁止とする
●鉄則(2)「あいまい言葉」は使用禁止とする
●鉄則(3)メッセージはただ1つの文章で表現する
●鉄則(4)「しりてが」接続詞は使用禁止とする
「So What?」を繰り返す

3章 ピラミッドを作る
ロジックを展開する、チェックする
帰納法でロジックを展開する
●帰納法の仕組み
●「同じ種類の考え」を前提とする
●帰納法は「つなぎ言葉」でチェックする
●結論を先に述べる
演繹法でロジックを展開する
●ビジネスで演繹法を使う際の注意点
●演繹法は「前提」をチェックする
ピラミッド作成のコツ
●コツ(1) 1つの考えを短く明快に
●コツ(2) 縦と横の「二次元」を意識する
●1対1の関係に要注意
●1対1の番外編「イメージによる説得」

4章 文書で表現する
導入から結びまで、気をつけるべきポイント
文書全体の構造はピラミッドに同じ
●ケース「X事業投資」
●主メッセージの位置
●目次のつけ方
段落表現のビジネス・スタンダード
●段落は「改行+大きめの行間」で
文章のわかりやすさは「接続詞」次第
●ロジカル接続詞
●「しりてが」接続詞の使用ルール
●曖昧な接続詞は誤訳のモト
読み手を引きつける「導入部」
●OPQ分析を使って導入部を作る
「結び」で今後のステップを示唆する

終章 メール劇的向上術
毎日のメールでピラミッドが身につく一石二鳥作戦
メールが見違えるように変わる「感謝の言葉にPDF」
「1日1回ピラミッド」×4カ月

巻末付録 ピラミッドの基本パターン