この本の神髄は、第三章です。
時間があまり取れない方は、第三章だけ読んでください。
あえて毒舌的に言えば、それ以外の章は読まなくていいかもしれません。
メールもWEBページもない時代に書かれた本なので、句読点や改行の多用が好まれるようになった現代では、通用しない内容も多いからです。
第三章を読むと、文章表現の並べ方に悩んでいる方は、視界がパッと明るくなるような爽快感が得られるはずです。
現代でも、あるいは外国語においても、十分に通用する内容です。
<第三章:修飾の順序>
第三章が解説していることを応用しながら、私なりに少し手を加えてご紹介します。
まず、この第三章では、修飾語配置の4原則が唱えられています。
1 節を先にし、句をあとにする
2 長い修飾語は前に、短い修飾語は後に
3 大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ
4 親和度(なじみ)の強弱による配置転換
このうち、もっとも単純な「原則2」の使用場面を見ていきます。
「長い修飾語は前に、短い修飾語は後に」
というものです。
◯
まず、次の言葉を組み合わせて読みやすい一文を作るには、どう考えたらいいでしょうか。
・黄色の紙
・罫線が引かれた紙
・厚めの紙
どれも「◯◯→紙」という構造で「紙」を修飾しています。
ですからこの文は、「黄色の」「罫線が引かれた」「厚めの」の3つ修飾語を、どのような順序で配置するかという問題になります。
そのため、3原則を使用できます。
◯
組み合わせとしては、3×2×1の順連組み合わせで計算し、次の6通りしかありません。
1 黄色の罫線が引かれた厚めの紙
2 黄色の厚めの罫線が引かれた紙
3 罫線が引かれた黄色の厚めの紙
4 罫線が引かれた厚めの黄色の紙
5 厚めの黄色の罫線が引かれた紙
6 厚めの罫線が引かれた黄色の紙
このうち、1と6はすぐに除外できます。
「黄色の罫線」とか「厚めの罫線」となって、意味が変わってしまうからです。
(紙に対しての修飾語が、罫線に対しての修飾語になってしまうため)
また、2と5も、「黄色の厚めの罫線」とか「厚めの黄色の罫線」とくっついて、意味が変わってしまいかねないので、除外できます。
そのため、3と4が残ります。
3 罫線が引かれた黄色の厚めの紙
4 罫線が引かれた厚めの黄色の紙
そしてこれは、原則2の「長い修飾語は前に、短い修飾語は後に」を意味していることが分かります。
長い修飾語から書くと、他の言葉と「くっつきにくくなる」ので、読みやすくなるというわけなのです。
◯
このように、単純な原則と、豊富な例を使って、
「言葉を配置する順序」について、わかりやすく解説してくれているのが第三章です。
この4原則を利用すれば、
ほとんどの文章の語順を決定できるようになります。
このことのすごさを、ぜひ実感してみてください。
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